事例紹介 〜省エネ・温暖化対策を新たな成長の原動力に〜今すぐできる中小企業向けヒント集

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新エネルギー

1. 企業基本情報

事業者名 気相成長株式会社
所在地 〒184-0012 東京都小金井市中町2-24-16
農工大・多摩小金井ベンチャーポート301号室
主な事業内容 ・ファインケミカルの研究開発
・ファインケミカル及び関連部品、関連装置の製造・販売
・ファインケミカルに関するコンサルティング
・化学物質の製造、販売及び分析
代表者 代表取締役 町田 英明
従業員数 2名
創業年 2008年7月
資本金 450万円
URL http://www.kisoh-seicho.com/index.htm#companyname
会社沿革
2008年7月
会社設立(資本金400万円)
2008年10月
農工大・多摩小金井ベンチャーポートに本社研究所を設置
2009年6月
薄膜太陽電池関連特許出願 特願2009-151732
2010年1月
資本金を450万円に増資
2010年7月
文科省科研費研究機関指定 22文科振台242号
2011年4月
エネルギー輸送方法の基礎研究を開始(科研費)

2. 環境・エネルギー分野における主な事業内容、特徴のある事業内容

<気相成長技術>

気相成長技術とはコーティングしたい物質を気化させ、極薄膜でコーティングする技術である。従来の液相(液体を用いてコーティングする技術)と比べて、コーティング剤が気体のため、複雑な形状や細かい物質にも漏れなくコーティングできるという特徴を持つ。また、他の特徴として、膜の厚さの制御しやすさや、剥がれにくさが挙げられる。そのため、太陽光パネルの表面のシリコン膜やドリルの先端のメッキなどに活用されている。気相成長株式会社では、こうした技術を活用してプロセス開発や技術開発などの委託を受け事業を行っている。

図2-1 薄膜画像

<水素の運搬貯蔵技術の開発事業>

最近では燃料電池車の燃料である水素に注目が集まっている。しかし、高圧の水素ボンベや高引火性のトルエンなどによる従来の水素運搬貯蔵技術では危険を伴うことから、新たな運搬貯蔵技術の開発を研究している。(本技術は同社独自のものであるため、詳細に関しては割愛する。)今後、水素が既存エネルギーの代替として活用するためには、安全性の向上が必要不可欠との考えのもと、本研究によるエネルギーの効率的運用を目指している。

図2-2 水素運搬貯蔵技術の概要

3. 事業詳細

事業開始の契機

経営者は前職でも気相成長に関わる事業を行っており、開発部門をけん引していた。しかし、会社上場に伴い、株主への利益還元が優先され、短期間で研究成果を出さなければならなくなり、事業の自由度の幅が狭くなってしまった。そのため、研究者が柔軟に研究できる会社を作りたいと考え、会社設立に至った。
設立当初は企業の運営経費削減の観点から、中小企業用のラボを探していたが、なかなか見つからず、知人の紹介を受け、現在の東京農工大内にある農工大・多摩小金井ベンチャーポートへ入居した。こうしたベンチャーサポート施設の多くは施設内で事業を始めてからの年数や売上などで退去基準を決めている。気相成長では、ベンチャーポートでの事業年数が規定よりも超過しているものの、東日本大震災などが発生したことから、企業の経営状況を考慮し特別に延長措置の適用を受けている。

事業拡大までの経緯

(1) 事業展開のきっかけ

設立当初は前職でつながりのあった企業を中心に受注を得ていた。このような企業が同社製品の高いクオリティーに満足し、再度発注し、また他企業に同社を紹介することなどにより受注を拡大している。また、徐々にホームページ経由で依頼を受けることも多くなったため、PRの重要性などを強く感じている。

(2) 補助金の利用

これまでの間、運営資金補助関連の補助金は受けていない。一方で、研究開発に関しての補助金を経済産業省から取得し事業を行っている。近年では新たなクライアント獲得を目的に積極的に展示会などに出展しており、そうした経費を補助する制度を活用している。

表3-1 取得補助金一覧

補助事業元 補助事業名 プロジェクト
経産省 平成22年度 新エネルギーベンチャー技術革新事業 低コスト薄膜太陽電池用SiおよびSiNx薄膜の革新的低温作製技術の開発
経産省 平成25年度 ものづくり中小企業・小規模事業者施策開発等支援補助金 低コスト高効率研究開発用CVD装置の開発
経産省 平成26年度 ものづくり中小企業・小規模事業者施策開発等支援補助金 超臨界流体を用いたTSV用高純度銅配線の低コスト作製技術
東京都 平成26、27年度 展示会等出展支援助成事業
(3) 他社との差別化
  • 迅速かつ低価格
    薄膜生成の原料販売を行っている企業や成膜装置を保有する企業は多く存在している。しかし、両方を兼ね備えている企業は気相成長株式会社のみである。その特徴を活かし、在庫として保有している様々な原料を用いて時間とコストをかけずに加工することができるため、クラインアントに大きなメリットを提供できる。
  • 豊富な知見
    創業からこれまで一貫して気相成長技術事業を行い、研究も非常に積極的に行ってきた。そのため、これまで多くのクライアントの課題を解決することができた。そうした実績から技術レベルの売上については、他社に負けない自信を持っている。
(4) 現状の改善すべき点
  • 人手不足
    現在2名で事業を行っている。社内規定として、研究や製品加工などのために薬品を使用する際は安全性の観点から2名体制で行っている。そのため、2名のうちどちらかが営業などで不在にすると、薬品を利用できなくなり非効率的である。

これまでに直面した壁

・技術開発資金の調達

研究者が自由に研究に専念できる企業を作りたいという意識から、気相成長株式会社では研究開発を積極的に行っている。そのため会社の運営資金とは別に多額の研究開発資金が必要になり、企業からの事業受託のみでは、資金の確保が非常に難しい。そのため、多くの補助金などを活用することで、研究開発資金を確保し、様々な技術を実用化している。

・特許に関わる新技術

気相成長分野では多くの特許が取られており、研究開発及び事業の障害になることがある。しかし、気相成長株式会社では一般的な企業のように特許領域に踏み込まないようにするのではなく、あえて踏み込むことで技術のブレークスルーを起こし、新たな特許取得につなげている。また、できる限り他企業と共同で出願するのではなく、単独で出願することで、今後の事業運営の自由度を高めている。

今後伸ばしていきたい点

まずはマンパワー不足を改善したい。従業員を1人増やすだけで研究効率が大幅に改善される。また、水素の運搬貯蓄事業を実用化させたいと考えている。

4. 環境・エネルギー分野での新事業を検討している事業者に対するメッセージ

環境という言葉は非常にきれいなイメージがある。そのため多くの企業が利用したいと考えており、振り回されるが、よく考えてみると全く環境保全等に貢献しない研究も多い。他企業と連携する際には、そのような観点からも検討することが重要である。